学ぶ方向を決める

社会人の学習が途中で止まる理由と、続く計画の作り方

社会人の学習が止まるのは意志ではなく、計画が中断を想定していないためです。止まり方を4類型に分け、1回分の学習量、再開の手順、到達点で取る記録という3か所を組み直す方法を整理しました。

公開 更新 カテゴリ 学ぶ方向を決める 読了目安 約9分

この記事でやること

こんな人に向けています
学習を始めたが継続できず、やり方を変えたい社会人
読み終えたときの状態
止まる原因を特定し、自分の生活に合う計画に組み直せる状態
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教材を買った週は毎晩開いていたのに、3週目あたりから開かない日ができ、気づくと1か月そのままになっている。学習が止まるときの経過は、だいたいこの形をとります。やめると決めた日があるわけではなく、開かない日が1日、2日と増え、ある時点で「最初から読み直さないと分からない」状態になって戻れなくなります。

戻れなくなる直前には、共通の出来事があります。数日空いたあとに教材を開き、前回どこまでやったかを思い出すだけでその日が終わる、というものです。これが2回続くと、開くこと自体が気の重い作業になります。

ここで「意志が弱かった」と結論づけると、次に試せる手段は気合いの入れ直しだけになります。同じ計画のまま姿勢だけを変えても、次も同じ場所で止まります。止まった場所には、計画の作り方の側に理由があることがほとんどです。以下では、その理由を4つに分けたうえで、どこを組み替えれば戻れるようになるかを扱います。

止まるのは意志の問題ではなく、計画が中断を前提にしていないから

社会人の学習において、中断は例外ではありません。繁忙期、決算、体調、家族の予定。まったく手をつけられない期間は、年に何度か必ず来ます。

にもかかわらず、学習計画の多くは中断が起きない前提で作られます。「平日1時間、週末3時間、3か月で完了」という形の計画は、3か月間その配分が続いた場合の話をしています。実際には途中で1〜2週間の空白が入り、その時点で計画表の日付と現実がずれます。ずれた計画表は見なくなり、見なくなった計画は消えます。

もう一つ、計画は調子のいい日に作られるという問題があります。学習を始めようと決めた日の自分は、平常時よりも意欲が高い状態です。その日の感覚で1回分の量を決めると、平常時の自分には重すぎる量になります。始めて2週間で守れなくなる計画は、たいてい着手日の自分を基準に組まれています。

計画どおりに進まなかったとき、最初に変えるのは行動の量ではなく計画の粒度です。「明日から本気を出す」の前に、「1回分が大きすぎたのではないか」を疑ってください。

止まる原因は4つに分けられる

止まり方は、次の4つのどれかに当てはまることがほとんどです。原因が違えば効く手当ても違うため、まず自分がどれかを判定します。判定材料は、止まる直前の1〜2週間に何が起きていたかです。

目的が遠い 単位が大きい 再開コストが高い 成果が見えない
止まる直前の様子 「今日でなくてもいい」と考える日が増える 平日は開かず、週末にまとめようとして流れる 数日空いたあと、開いても前回の確認で終わる 続いてはいるが、手応えがないまま惰性になる
何が起きているか 達成したと判定できる地点が計画の中にない 1回の枠が、生活で確保できる時間を超えている 再開に必要な情報が頭の外に残っていない 記録が学習時間だけで、変化を読み取れない
効く手当て 90日以内に判定できる到達点を置き直す 1回を20〜30分で終わる形に割り直す 終了時に「次の1手」を書き残す 記録の単位を時間から到達点に変える
やっても効きにくいこと 学習時間を増やす 早起きして枠を広げる 教材を買い替える 難度の高い教材に進む

4つは重なることもあります。その場合は「単位が大きい」から先に手をつけてください。1回分が重いままでは、到達点を置き直しても記録の取り方を変えても、それを実行する日が来ません。

目的が遠いときは、90日以内に判定できる到達点を置く

「業務で使えるようになる」「転職できる状態にする」は目的であって、到達点ではありません。到達点とは、達成したかどうかを他人が判定できる状態を指します。判定できない目標は、達成しても達成した感覚が生まれないため、続ける理由が積み上がりません。

到達点として使えるかどうかは、次の3つで確かめられます。

  • 期限が90日以内に収まっていること。半年先の地点しか置けない場合は、その手前に一つ挟みます
  • 達成の判定に自分の主観が入らないこと。「理解できた」は判定できませんが、「解答を見ずに例題を最後まで書けた」は判定できます
  • 達成すると、日常の作業や行動が一つ変わること。何も変わらない到達点は、通過しても実感が残りません

具体例で言えば、「毎月やっている集計を、手作業ではなく自分の書いた手順で出せる」「英文の問い合わせメールを、下書きを人に見てもらわずに送れる」といった形です。地味に見えますが、この粒度なら達成日が特定でき、次の到達点を置く材料にもなります。

なお、そもそも学ぶ対象自体が定まっていないために目的が遠く見えている場合は、計画の問題ではありません。その場合は何を学ぶかを決める順番を先に片づけたほうが早く進みます。

1回分の学習は「中断しても損しない大きさ」まで割る

1回2時間という枠は、単位ではなく単位の集合です。単位とは、途中で止めても次に開いたときに続きが分かる区切りを指します。この区切りが大きいほど、中断のたびに失うものが増えます。

目安として、1つの単位は最後まで終えるのに20〜30分程度に収めます。切り方は、教材の章立てではなく「終わったと言える形」で決めてください。「今日は第3章」という切り方は、章の長さを教材の著者が決めているため、自分の生活時間と関係がありません。「例題を2問、解答を見ずに最後まで書く」「動画を1本見て、出てきた操作を自分の手元で1回再現する」のように、終了条件を自分で書けるかどうかが分かれ目になります。

サイズごとの性質は次のように違います。

10〜15分 20〜30分 60分以上
平日に確保できるか 移動中や待ち時間にも入る 帰宅後に1回なら入る日が多い 予定を空ける必要があり、週末に寄る
途中で中断したとき ほとんど影響しない 区切りまで届かない日が出る 持ち越しが発生し、次回の冒頭を圧迫する
向く内容 用語の確認、前回の復習、暗記の反復 例題を1問通す、手元で1つ再現する 設計を伴う課題、長文の読解、通しの制作
使いすぎたときの副作用 断片ばかり増え、通した理解に届かない 大きな課題がいつまでも終わらない 予定が崩れた週は学習量がゼロになる

平日を20〜30分の単位で埋め、60分以上を要する課題は月に数回だけ枠を取る、という配分が現実的です。60分以上の枠だけで計画を組むと、その枠が消えた週はまるごと空白になります。

中断からの再開を、あらかじめ手順にしておく

再開コストの正体は、「どこまでやったか」「何が分からなくなっていたか」「次に何をするか」を思い出す作業です。この3つは学習を終えた時点では頭の中にありますが、数日で消えます。消えたものを再構成する作業には20分ほどかかり、その日の学習枠がそれで埋まります。

対策は、終わるときに次の1手を外に書き出しておくことです。3行で足ります。今日どこまで進んだか、詰まったまま残したこと、次に開いたら最初にやること。この3行があると、再開時の最初の20分が本題に使えます。

もう一つ、区切りのいいところで終えないという方法があります。章を終えた直後に閉じると、次回は「次の章を選ぶ」という判断から始まります。判断は着手の障害になりやすいので、次にやることが決まっている状態で止めるほうが再開は軽くなります。

空白の長さによって、戻る位置も変えます。

  • 1週間以内:前回の続きから始めて構いません
  • 2週間から1か月:1回分だけ戻り、最初の1コマは復習だけに使うと決めておきます。進めようとして進まないと、そこでもう一度止まります
  • 1か月以上:続きから再開せず、到達点を置き直します。空白の間に業務や生活の条件が変わっていることが多く、以前の計画がそのまま使えるとは限りません

繁忙期の時期が事前に分かっている場合は、止まる前に再開日を決めておいてください。「落ち着いたら再開する」は日付がないため、落ち着いた後も再開されません。

記録は時間ではなく到達点で取る

学習時間の記録は、続いているかどうかは教えてくれますが、進んでいるかどうかは教えてくれません。同じ90分でも、1問も解けずに終わった日と、詰まっていた箇所が動いた日が、記録の上では同じ行になります。時間だけを記録していると、量をこなしているのに前進の実感が湧かないという状態になり、これが4類型の「成果が見えない」を作ります。

記録する項目は3つに絞ります。

  • できるようになったこと。動詞で1行だけ書きます(「差分の抽出を手順書なしで書けた」など)
  • 詰まったまま残したこと。未解決を残しておくと、次に開く理由になります
  • 次の1手。再開用のメモと兼ねられます

学習時間は、書いてもかまいませんが補助の位置づけです。判断に使うのは「できるようになったこと」の行数のほうです。

月に一度、この記録を上から読み返します。行が増えていない月は、努力の量ではなく設計に原因があります。単位の切り方が「終わったと言える形」になっていないか、教材の難度が現在地に合っていないかのどちらかであることが多いので、その2点を確認してください。

逆に、行は増えているのに手応えがない場合は、学習側ではなく出口の問題です。身につけたものを業務で一度も使っていないと、記録上は進んでいても実感は生まれません。その場合は学んだことを仕事に持ち込む方法で、既存業務の中から適用先を探す手順を扱っています。

次の1週間でやること

計画を最初から作り直す必要はありません。順番としては、次の4つを1週間のうちに片づけます。

  1. 止まった直前の2週間を思い出し、4類型のどれだったかを一つ選ぶ。複数当てはまる場合は「単位が大きい」を優先する
  2. 90日以内に判定できる到達点を1つだけ書く。他人が達成を判定できる文になっているかを確認する
  3. 今週やる分を20〜30分の単位に割り、終了条件を書く。「第◯章」ではなく「◯◯ができた状態」で書く
  4. 1回目を終えた時点で、3行のメモを残す。この1回目のメモが残るかどうかで、再開のしやすさが決まります

ここまでを自力でやってみて、締切と進む順序だけがどうしても作れないと分かった場合は、外部の枠を使う判断に移ります。締切と順序は、独学で作りにくい部分の代表です。何を外に任せると効果があるのかは、オンラインスクールと独学の違いで、費用以外の差として整理しています。

よくある詰まりどころ

平日はどうしても時間が取れない

取れないのは1時間の枠であって、20分の枠は取れていることが多くあります。まず1週間、学習をせずに「もし20分あったとしたらどの時間帯か」だけを記録してみてください。帰宅直後、就寝前、朝の出勤前のどこかに、繰り返し空いている時間帯が見つかります。毎日である必要はなく、週3回同じ時間帯に入れば計画として成立します。

やる気が出ない日にどうするか

やる気が出ない日のための単位を、あらかじめ用意しておきます。前回の記録を読み返すだけ、用語を5つ確認するだけ、といった10分以下の作業です。この日を「やらなかった日」にしないことに意味があります。連続が切れた感覚は、次に開くまでの間隔を長くします。

スクールに申し込めば続くのではないか

締切と進度管理は外から買えますが、1回分の学習単位の大きさは変わりません。受講しても平日に確保できる時間が20分のままなら、課題が終わらずに止まります。申し込む前に、単位の割り直しと再開手順の2つは自分で用意しておいてください。費用が回収できる条件を先に確かめたい場合は、スクールの費用対効果の考え方を参照してください。

何度も止まっているので、また止まる気がする

過去に止まった回数は、続けられるかどうかの材料にはなりません。止まった位置が毎回どこだったかのほうが情報量があります。同じ位置で止まっているなら、そこが設計上の弱点です。開始2週間で毎回止まるなら単位の大きさ、1か月ごとに止まるなら再開手順、というように、止まる周期から原因の見当がつきます。